米国では一定規模以上の政府調達事業への適用を義務づけられているEVMですが、日本の建設業における普及は進んでいません。
理由はいくつか考えられますが、最も大きな要因は現場における出来高・工程管理が客観性より経験を重視した職人芸になっている点にあります。

日本の建設業界ではベテランの現場代人が経験に基づく独自手法で現場を治めています。
あるいはその管理手法が伝統として企業組織に根付いています。
今更システマチックな管理手法など必要ない、ともいえるわけです。

こうした現状は、継続性という観点から2つの問題をはらんでいる、と私は考えています。

ひとつは、管理手法の継承についてです。

仮にその手法が組織に根付いているとして、日本企業においてその継承は徒弟制度的になされていることが多いです。
建設業における年齢構成が平準的であれば、こうした時間のかかる継承も効果的であったことでしょう。

しかし現在、建設業は未曽有の高齢化と人手不足に見舞われています。
ベテランたちのリタイヤが加速する一方、その技能の継承者である中堅の数が圧倒的に減っているのです。
自然、現場の要求として若手に早く一本立ちをしてもらわなければならない。
こうして広がった世代間ギャップの前には伝統的な徒弟制度はその力を失いつつあります。

ただでさえ少なくなった若手から、徒弟制度的継承に耐えうる人材をさらに峻別しなければならないわけです。
ここに技能継承に関する問題点があります。

ふたつめは、情報共有の在り方についてです。

いうまでもなく、建設案件に携わっているのは受注者(施工者)だけではありません。
発注者(施主)も契約の履行が適切に行われるよう、監理・監督を行っています。
さらに、施工者/施主ともそれぞれに色々な立場の関係者がいます。
現業、管理者、経営者、設計者、行政、テナント予定者 等々。
いわゆるステークホルダー(利害関係者)が現業の担当者の想像の範囲を超えて多岐にわたっているのです。

施工段階において、出来高や実績、工程の進捗状況はこれらステークホルダー間で共有されるべき情報のなかでも最も重要なもののひとつです。
ここで共有される情報は、共通の言語で、客観性があり、可視化されているものでなければなりません。
これらに乏しい管理やアウトプットは益々多様化するステークホルダーに何ら価値を提供していない可能性があります。

ステークホルダー間の情報共有の意義はそれぞれの利害調整にとどまりません。
プロジェクトがリスクに直面した際、円滑にステークホルダー間で情報共有がなされている場合、その機器予測やリカバリーを組織(面)で行うことができます。
逆の場合、リスク対処の負荷は現業、特に現場代理人や施工管理技士に集中します。
現業においては若年化と反比例して責任が重くなる。建設業に、若手がエントリーしてこなくなる負のスパイラルがここに発生するのです。

この2つの観点から、伝統的な管理手法では現場がもたない。外部環境の変化が建設現場に及んでいるのだと私は考えています。

EVMにも弱点があります。外的要因に制約をうけ、また互いに関連しあう各工程0をx軸としてヨコに並べるのは中々大変な作業です。
また、工程が進む中で行われる山崩しや、山均し、クリティカルパスの適用なども難しいです。

それであっても、EVM、あるいはEVM的な出来高/実績管理は多くの関係者の情報共有を可能にするツールです。
EVMの特徴は出来高だけではなく、実コスト(AC)の比較管理を行うことで、出来高推移に潜む問題点の抽出を行う点にあります。
建設業界の人口減少と高齢化、建設案件に関連する利害関係者の多様化、この流れに耐えうる管理手法の改善にEVMは多くの示唆を与えているのは間違いありません。