<はじめに>

企業にとって、勤務記録表は労務管理のコア情報で、その労務管理は現在、働き方改革などの動向にさらされています。
働き方改革は少子高齢化のなか、女性や高齢者の潜在力を活用し、現在の労働環境を改善させて日本全体の生産性を向上させ、最終的には出生率を向上させていこうとするものです。
その政策の骨子に労働時間の短縮というのがあり、それに向けた適正な労務管理が求められています。
労働時間の適正な把握というのもそのひとつで、そのためのガイドラインが厚生労働省により策定されています。

「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」


※1「ガイドライン」とは、自主的に遵守することが推奨されるルールです。本来的には法令や基準との違いは、義務か推奨かという違いにあります。しかし、現在は法律の解釈の部分も多く含んでおり、行政処分などの基本となるため、法律実施の基本的な方向性や、判断基準を示すと見るべき存在となっています。

今回の投稿ではこのガイドラインに記述されている「労働時間の適正な把握」に関する整理を行い、これからの出退勤管理システムに求められる要件についての考察を行います。

<「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の要点>

1.趣旨

  • 労働基準法において、使用者は労働時間を適切に管理する責務を有している。
  • しかし、現状は未だ自己申告制による労働時間の不適正な管理が散見され、それが長時間労働や割増賃金の未払いといった問題につながっている。
  • このため、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置を具体的に明らかにする。

2 適用の範囲

  • 対象事業場は、労働基準法で労働時間に関する規定が適用される全ての事業場
  • 対象労働者は、労働基準法第41条に定める者(※2)及びみなし労働時間制が適用される労働者(※3)を除く全ての者であること
    • ※2 管理監督者など労務管理について経営者と一体的な立場にある者
    • ※3 事業場以外の労働時間の算定が難しい場所で労働する者。裁量労働制に従事するもの。

3 労働時間の考え方

  • 労働時間とは、明示又は黙示によらず使用者の指揮命令下に置かれている時間のこと
  • 労働時間に該当するか否かは、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんによらず、客観的な評価で個別具体的に定まる
  • 例えば以下のような時間は労働時間に当たる
    • 着用を義務付けられた所定の服装への着替え
    • 手待時間
    • 指示により業務に必要な学習等を行っていた時間

4 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置

  1. 始業・終業時刻の確認及び記録
  2. 始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法
    • 企業管理者が自ら現認して記録する
    • タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的なデータを記録する
  3. 自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置
    • やむを得ず、自己申告制を残す場合には社内に対し適正管理についての周知を十分に行う
    • 現実の出退勤時間との齟齬が生じないようさまざまな措置を講ずる
  4. 賃金台帳の適正な調製
    • 使用者は、労働基準法に基づき、労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数といった事項を適正に記入する
    • 賃金台帳にこれらの事項を記入していない場合や、故意に賃金台帳に虚偽の労働時間数を記入した場合には罰則が適用される
  5. 労働時間の記録に関する書類の保存
    • 出勤簿やタイムカード等の労働時間の記録に関する書類について、労働基準法に基づき3年間保存しなければならない
  6. 労働時間を管理する者の職務
    • 労務管理を行う部署の責任者は労働時間管理上の問題点の把握及びその解消のために様々な措置を講ずること
  7. 労働時間等設定改善委員会等の活用
    • 6のために、必要に応じ労働時間等設定改善委員会等の労使協議組織を活用すること

以上が「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の要点です。
先に触れたように、ガイドラインといいつつ「推奨」を超え、法律の解釈にまで踏み込んだ建付けになっています。

<勤怠管理システムに求められる要件>

労働時間の把握手段に関する要点は以下の3点に集約できます。

  • 企業管理者が自ら現認して記録する -A
  • タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的なデータを用いる -B
  • やむを得ず、自己申告制を残す場合には現実の出退勤時間との齟齬が生じないようさまざまな措置を講ずる -C

Aは原理原則に基づく運用です。企業管理者が自らの責任で正確に労働時間の把握と計測を行うべし、ということですが現実的には難しいところがあります。
Bが生産性向上やIT利活用という観点から、これから求められる労働時間管理の方向性を示すものです。以降の考察はこの流れで行っていきます。
Cは自己申告にのみ基づく労働時間管理はあり得ないこと。結局は自己申告に基づく運用に加え、その補完のため人手や自動化による運用を加えよ、ということです。
また、機械による自動化を活用しているとしても、及ばざるところに対しては必要な措置、運用を講ずる必要があります。

以上の論点整理を踏まえて、勤怠管理システムに求められる要件を考察してゆきます。
まずは、タイムカード、ICカード、パソコンなどによる労働時間管理のイメージを列記します。

  • 始業・終業時刻の確認及び記録を客観的かつ正確に行える
  • 対象労働者は正規/非正規、事業場問わず、広範囲に亘る
  • 労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数といった事項が集計できる
  • 取得データは3年以上保管され、随時検索ができる
  • 管理者が必要に応じ、出退勤状況をモニターできる

こうした運用イメージを実現する機能が勤怠管理システムに求められる要件になります。
次回はこの具体的な要件について、考察を進めます。

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